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マーケティング戦略を立案する上でまず最初に行うのが、外部、および内部の環境分析です。まずは、外部環境分析を行ってみましょう。
マーケティング戦略の立て方でもご紹介した通り、外部環境分析にはマクロ環境分析とミクロ環境分析がありますので、まずはマクロ環境分析を行ってみましょう。マクロとは広く世の中の動向というような意味でとらえてください。この際に使える整理方法として、PEST分析を用いてみます。
PEST分析とは
PEST分析は政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)のそれぞれの英語の頭文字を取って、それをつなげて表現した分析の手法です。この4つの分野で現在起きていること、あるいは今後起こるであろうことをできるだけ洗い出し、自社に直接影響しそうなものをピックアップしていく作業です。ただし、単に列挙するだけではなく、自社にとって好影響を与えるものを「機会」、自社にとって悪影響を与えると思われることを「脅威」として整理していきます。では具体的に見ていきましょう。
政治(Politics)
政治という分野で注目する項目としては、法律改正、政権交代、規制緩和、外交、税制改革、年金制度変更などが挙げられます。現在の日本の場合、残念ながら政権交代はめったに起こりませんが、例えば今年大統領選が行われる米国では、政権が変わると政策も大きく変わるので、様々な業界が大統領選に大きく注目していると言われます。日本では政権交代はないものの、法律の改正は様々行われていますし、規制緩和が行われると関連業界は大きな影響を受けます。
また、外交という意味では、中国に大きく依存していた輸出産業や製造業では、今後大きな方針転換が避けられそうにありません。
さて、今後政治によって大きな変化が起きる業界の一つとして、ビール業界があります。ビール業界は酒税法に翻弄されてきた業界と言えます。ビールメーカーはビールにかかる酒税を抑えて消費者に安くビール系のアルコール飲料を提供するものとして発泡酒や第三種のビールを開発してきました。
しかし、今後はそれらにかかる税率を一律化することが決まっています。こうなると今まで提供してきた発泡酒や第三種のビールという区分けの意味がなくなるため、再びビール会社はビールの開発に鎬を削っています。
ただし、これを機会ととらえるか、脅威ととらえるかは各社の考え、置かれているポジション次第と言えます。例えばスーパードライという強力なビールのブランドを持っているアサヒビールにとっては大きな機会でしょうし、第三種のビールに強いメーカーは脅威ととらえるかもしれません。
このように同じ事象に関しても、その企業によって機会か脅威か変わってくることには注意が必要です。
経済(Economics)
当然のことながら経済はどのような業界にも大きな影響を与えますが、注目する項目として、景気動向、インフレ・デフレ、GDP成長率、日銀短観、失業率、鉱工業指数、為替などが挙げられます。これらに関しては、全ての事業に密接に関係する項目だけに常に意識されているものが多いのではないでしょうか。
特に現在大きく各方面に影響を与えているものとして、「物価」が挙げられます。これまでデフレが言われ続けた日本で、この「物価高」という言葉が頻繁に使われるようになっており、売価への転嫁、製造原価のアップなど、大きな経済の変化に対応していく必要があります。
また、失業率に関連しますが、多くの業界で人手不足が深刻になっており、業種や地域によって人手不足の深刻度が異なってきています。この人手不足に関しては、多くの企業にとって脅威になると言えますが、業界によっては逆に機会にもなりえます。
例えば、IT業界やロボット業界では、従来の人が行っていた業務を代替することで需要が拡大する可能性があります。例えば、警備業界では、監視カメラとAIを活用した画像解析技術によって、警備員の代わりにAIが現場を監視、異常が発生するとアラートを発報することで、実際の警備員が駆けつける、などといったサービスも提供されています。
社会(Society)
社会に関しては特に多様な項目がありますが、代表的なものとしては、文化の変化、人口動態、教育、犯罪、世間の関心、少子高齢化、女性の社会進出などが挙げられ、これこそ本当に「世の中(社会)」のトレンドということができるでしょう。従って特にここでは、自社の事業に本当に関連するか、という視点が重要になります。
例えば、自社の事業がBtoB商材を扱っている場合は、あまり人口動態に関する事象ばかり検討しても時間の無駄になってしまう可能性があります。しかし、高齢者が増えることで増えるtoB商材も当然あります。例えば高齢者施設であったり、医療機器などは高齢者が増えると増える業務用需要の代表例と言えます。高齢者が増える→介護施設向け製品需要が増える、などという発想の展開が求められます。昨今は介護施設や病院に向けてのWi-Fi設備の需要が高まっているようです。これは必ずしも入居者や入院患者向けでだけではなく、面会や見舞いに来る家族等からのニーズでもあるようです。
また、最近はフェムテックという言葉が注目されています。Femtech(フェムテック)とは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語で、「生理・月経」「妊活・妊よう性」「妊娠期・産後」「プレ更年期・更年期」など女性特有の健康課題をテクノロジーの力で解決するための製品・サービスを指しており、2025年には世界で5兆円規模の市場になると言われているそうです。
こうした市場の変化をできる限り洗い出して、見つけていくことがPEST分析の重要な効果となります。
技術(Technology)
技術の切り口では、新技術の登場、新しい技術への投資、技術の陳腐化など、技術に関わる変化を整理していきます。上述のAIの事例などは参考になるでしょう。
特に業界内で既に注目されている技術に関しては、当然押さえておく必要があるのは言うまでもありませんが、さらに注意が必要なのは代替となる技術についてです。
この点で最も大きな変化を起こしたのがスマートフォンです。スマートフォンは様々な技術を代替してしまい、多くの業界が影響を受けました。デジタルカメラ、紙の地図、デジタルオーディオ、時計、書籍、カーナビなど、挙げれば枚挙にいとまがありません。特にデジカメは業界内で解像度競争を繰り広げているうちに、スマホの携帯性によってほぼ完全に市場を奪われてしまった形となっています。紙の地図も今や若者はその存在すら知らないと思われます。
特にこの「技術」に関しては、あっという間に競争環境をひっくり返す可能性が高いものであると言えます。
ビーウェル・マネジメントのマーケティング導入支援サービス
少し専門的な内容になりましたが、PEST分析のようなマクロ環境分析を行うことで、マーケティングの結果は大きく変わってきます。
なかなか自社で取り組むことが難しい、という場合にはお気軽にご相談ください。
ビーウェル・マネジメントでは、中小企業様に向けて的確な戦略の立案から、社内研修・育成まで包括的なマーケティング支援を実施しています。
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