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マーケティングの基本はSTPである、というブログを以前公開いたしました。
繰り返しになりますが、STP分析とはマーケティング戦略を立てていく上での最重要なプロセスである、市場細分化(Segmentation)→ターゲティング(Targeting)→ポジショニング(Positioning)を行うプロセスであり、それぞれの英語表記の頭文字を取ってSTP分析と呼んでいます。つまり、自分たちのお客さんを定める、というプロセスであり、私が考える中ではマーケティングのスタート地点であると言えます。
STPは顧客を広げていく際にも重要
STPは事業を拡大していく上でも重要な概念となります。
これまでの顧客に加えて新しく市場を広げていく際には、従来の事業とは異なるSTPを行い、新たなターゲット客を獲得していくことがポイントになります。
以前のライザップのコラムをご覧頂くと分かる通り、従来の顧客とは異なる顧客を発見して開拓していくことで、事業全体を拡大していくことが可能になります。ライザップの例では、同社は従来のとにかく真剣に体づくりをしたいという層に向け「ライザップ」というサービスを展開してきました。
しかし、一方でそれほどタフに鍛え上げなくても、ちょこっと健康づくりを兼ねてジムに行ってみたいという層に向けての新規事業として「Chocozap」が始められました。
この結果、従来とは全く異なった顧客層に向け、新規事業を展開することに成功したのです。
こうした取り組みは、ワークマンが「ワークマンプラス」や「ワークマン女子」を展開した動きも同様で、新規顧客を獲得するために、新たなSTPを構築することが新たな事業開拓につながっていくのです。
シェア争いの激しいビール業界では
話は変わりますが、ビール業界は常に激しいシェア争いをしてきた業界です。最近は第三のビール等との税額の差が小さくなり、将来的にはビールと他のビール類との差がなくなる予定です。このため、ビールブランド間でのシェア争いは、今後もますます激しくなっていく見通しです。
そのような中、キリンが新たに展開している「晴れ風」には特に新たなSTPの要素は見られないように思います。背景として、「キリンラガー」が次第にシェアを落とす中、「一番搾り」に次ぐ新たな柱となるブランドを開発しようという意図が見えます。
どちらかというと、ラガーに代わる新ブランド開発という「守り」の打ち手のように見えます。
アサヒビールの新たなSTPとは
一方のアサヒビールは異なる展開を見せています。
アサヒビールには「スーパードライ」というビール業界のトップブランドがあります。彼ら最近の動きとして「ドライ」ブランドの新しいユーザーの獲得という狙いが見て取れます。そのために行われているのが、新しいSTP展開です。つまり、市場細分化の切り口を変え、新しいターゲットに向けて新製品を投入しているのです。
まずはアサヒスーパードライ「生ジョッキ缶」の展開です。彼らは新しく缶ビールの顧客として、「店での生ビールユーザー」にターゲットを設定したと言えます。それは缶ビールにとっては新規市場と言えます。
缶ビールでありながら、そのまま開栓すれば、泡が自動的に溢れてくるというモノづくりであり、「ハレの日」に缶ビールを飲んでもらおうという戦略と言えそうです。そのキャッチフレーズは「泡ごといくぞ、缶パカパーン」です。秀逸ではないでしょうか。
低アルコール度数ユーザーへの展開
加えて、アサヒビールは通常のビールよりやや低めのアルコール度数である3.5度のビール、「スーパードライ DRY CRYSTAL」を投入しました。これも新しいSTPであると私は考えます。
ここでの細分化の軸はアルコール度数です。軽めの度数のビールを好むユーザーがいることを見つけ、そこに向けて「スーパードライ」をぶつけてきたのです。もちろんオリジナルブランドとの多少の重複はあると思われますが、特にSNS世代である若年層の開拓を想定していると想像します。
今の若者のは、お酒を飲んでも酔いすぎないことが重要であると考えているそうです。飲んでもSNSを使えないほどには酔いたくないのです。そういった若年層を「ドライ」ブランドに取り込む作戦と言えそうです。
アサヒビールの戦略は、成熟したように見える市場であっても、新たにSTPを再設定することで、新しい市場を開拓し、事業をさらに拡大させることができるという好例と言えそうです。
ビーウェル・マネジメントのマーケティング導入支援サービス
STPとはビール会社のような大手企業だけのものではありません。
自社のターゲットとする顧客層の設定は、中小企業にとっても極めて重要な課題と言えます。
ビーウェル・マネジメントでは、このようなお悩みをお持ちの経営者様に向けて、中小企業様専門のマーケティング施策に特化したサービスをご提供しております。的確な戦略の立案から、社内研修・育成まで、コストを抑えて包括的なマーケティング支援であることが最大の特長です。
もしマーケティングに関してお悩みのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。