アンケートの設計とMECE

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アンケート調査を実施する場合に強く意識する必要がある概念があります。それはMECEと呼ばれる考え方です。
日本語で言えば「漏れなくダブりなく」という意味ですが、今回は、MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)の意味とアンケートにおける重要性を考えてみたいと思います。

MECEとは?

MECE(ミーシー)とは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、日本語では「漏れなくダブりなく」と訳されます。これは、ビジネスの問題解決や分析を行う際に利用される様々なフレームワークに共通する考え方と言えます。様々なフレームワークはMECEに情報を整理するためのツールということができます。
Mutually Exclusive(相互に排他的)とは、各カテゴリーや要素が重複せず、明確に区別されている状態を指します。例えば、「20歳代」「30歳代」「40歳代」のように年齢層を分類すれば、どんな個人も一つのグループにしか属さないため、複数の回答が選ばれることはありません
また、Collectively Exhaustive(網羅的)とは、分類が全体を完全にカバーしていることを意味します。例えば、年齢層を「20歳代」「30歳代」のみとすると、例えば40歳代以上の人々が分類から漏れてしまいます。そのため、「19歳以下」「20歳代」「30歳代」「40歳代以上」とすることで、すべての年代が含まれるように選択肢を設けなければなりません。
MECEという考え方を取り入れることで、論理的に整理された情報分析が可能となり、誤解や抜け漏れを防ぐことができます。

アンケートにおけるMECEの重要性

アンケートの設計においてMECEを意識することは、データの正確性と有用性を確保するために不可欠です。MECEの原則が守られていないと、回答者が適切な選択肢を選べなかったり、集計時にデータが不完全になったりする可能性があります。
以下に、アンケート設計においてMECEを心がけなければならない例を具体的に見ていきましょう。

選択肢の重複を避ける

例えば、次のような選択肢のある質問を考えます。

「あなたの年齢を選んでください」
・20~30歳
・30~40歳
・40~50歳

この場合、30歳や40歳の回答者はどちらを選ぶべきか迷ってしまいます。場合によっては、二つの選択肢を選んでしまうかもしれません。これではデータの信頼性が低下し、集計が困難になります。
適切な選択肢としては、以下のように明確な区切りを設けるべきです。

・20~29歳
・30~39歳
・40~49歳

このようにすることで、どの回答者も一つのカテゴリーにしか属さないため、回答しやすくなり、重複回答も避けることができます。

全体を網羅する

MECEが守られていないと、一部の回答者が適切な選択肢を見つけられず、アンケート結果が偏る可能性があります。例えば、以下のような選択肢では不完全です。

    「あなたの職業を選んでください」
    ・会社員
    ・自営業
    ・公務員

    この選択肢では、専業主婦・主夫、学生、無職の人がどこにも当てはまりません。そのため、「その他」という項目を設けるか、より詳細な分類を加える必要があります。例えば、以下のように修正できます。

    ・会社員
    ・自営業・フリーランス
    ・公務員
    ・学生
    ・専業主婦・主夫
    ・無職
    ・その他(具体的に記入)

    こうすることで、すべての回答者が自分に該当する選択肢を見つけることができ、アンケート結果の精度が向上します。

    回答しやすさに気をつける

    MECEを意識して設計されたアンケートは、回答者の実態に即した回答が行いやすくなります。たとえば、「満足度」を測る際に以下のような選択肢を設けた場合、回答者はどのように感じるでしょうか。回答者が自分にピッタリの感情を選びにくく、「普通」に回答が集中する可能性が高くなります。

    「あなたのこの製品に対する満足度を答えてください」
    ・満足
    ・普通
    ・不満

    これに対して、次のような選択肢とどうでしょうか。

      ・非常に満足
      ・やや満足
      ・普通
      ・やや不満
      ・非常に不満

      このように段階的な選択肢が設けられることで、回答者が自分の感情に最も合う選択肢を選べるようになり、結果的に正しい分析が可能になります。

      ひとつの設問で二つのことを聞かない

      また、アンケートを作成する際には、1つの設問で複数の要素を尋ねてしまっているケースを良く見かけます。例えば、以下のようなパターンです。

      「この製品のデザインや使いやすさについて満足していますか?」
      ・はい
      ・いいえ
      ・どちらとも言えない

      このような設問では、デザインには満足しているが使いやすさには不満を感じている場合、回答者はどの選択肢を選べばよいか迷ってしまいます。結果的に「どちらとも言えない」に回答が集中するかもしれません。その結果、データの信頼性が著しく低下し、正確な分析が不可能になります。
      これを適切な設問にするためには、

      「この製品のデザインについて満足していますか?」
      ・はい
      ・いいえ
      ・どちらとも言えない

      「この製品の使いやすさについて満足していますか?」
      ・はい
      ・いいえ
      ・どちらとも言えない

      と別の設問にすることで、より正確な回答が得られ、分析しやすくなります。

      信頼性の高い意思決定につなげよう

      企業や団体がアンケートを実施する目的は、正確なデータを基に意思決定を行うことです。しかし、MECEの原則が守られていないと、データが偏ったり歪んだりして、誤った結論を導き出す可能性があります。
      例えば、新製品の開発に関する市場調査で、選択肢が不十分だった場合、本来のターゲット層のニーズを正しく把握できないかもしれません。
      適切な選択肢を設定することで、より実態に即した意見を収集でき、効果的なマーケティング戦略や事業計画の立案が可能となります。

        まとめ

        このようにアンケートの設計においてMECEを意識することは、回答者の利便性を向上させるだけでなく、正確で分析しやすいデータを得るために不可欠です。Mutually Exclusive(相互に排他的)であることで、回答の重複を防ぎ、Collectively Exhaustive(網羅的)であることで、すべての回答者に適切な選択肢を提供できます。

        MECEが守られていないアンケートでは、誤ったデータや偏った結果が得られ、意思決定の質が低下する恐れがあります。そのため、アンケートを作成する際は、選択肢が「漏れなく、ダブりなく」設計されているかを常に確認することが重要です。

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