ライザップのマーケティング戦略に学ぶ

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以前のこのコラムでマーケティングの4P(製品、価格、チャネル、プロモーション)は、ターゲットを決めた後、最後に検討するということを書かせて頂きました(「マーケティング戦略の立て方」参照)。マーケティングの世界では、まず自社の製品ありきではなく、重要なのは最初にターゲットユーザーを定めて、その層に向けて提供製品、価格、チャネル、プロモーション等を検討するという考え方であり、多くの中小企業はこの点を疎かにしていると言えます。

今回はこの点で非常に参考になる企業、ライザップさんの事例を見てみたいと思います。

ライザップの戦略

ライザップと言えば、「結果にコミットする」で有名なパーソナルトレーニングジムを提供している企業です。彼らのターゲットはどのような層でしょうか。男性?女性?20歳代?50歳代?CMに起用している有名人を見る限り、性別や年代は特に特化していないようです。私は彼らのターゲットは「真剣に自分の体を変えたい人、これまで何度もダイエットに失敗した人」と考えています。

ライザップの4P

「結果にコミットする」というキャッチコピーは、これまで何度も自己流でダイエットや体づくりに挑戦してきたが、成功に至らなかった人たちへのメッセージであると考えます。彼らを成功に導くために提供されている「製品」が完全個室のマンツーマントレーニングなのです。

また、価格は298,000円~となっており、余程の覚悟がないと払えない設定になっています。さらに、「プログラム開始から30日間はいかなる理由のご不満に対しても、ご納得いただけないときは、全額を返金いたします」としており、相当な自信が感じられます。

プロモーションに関しては、有名人が実際に痩せるまでのCMや映像を活用してその実際の効果を表現しており、非常に説得力あるものとなっています。

ライザップの限界

こうしたサービスによってライザップは一定の評価と業績を達成しました。しかし、課題もありました。ここまで真剣に体づくりをしたい人というのは世の中にどの程度存在するでしょうか。少なくとも私の身の周りではライザップに通っている人を聞いたことがありません。つまりライザップがターゲットにしている市場はある意味「ニッチ」なのです。

彼らのプロモーションを過去から見てきましたが、以前は主婦層に集客を図るような展開もしていました。しかし、一般の主婦層が30万円近いダイエットサービスを気軽に申し込むことは相当に難しかったと思われます。

チョコザップの戦略

そこで彼らが考え出したのが、チョコザップ(chocoZAP)です。彼らのサービスは、運動を継続しやすく、効果を実感できる、「簡単」「便利」で「楽しい」、コンビニジムと表現されています。つまり、チョコザップのターゲットは「ライザップで取り込めなかった気軽に軽い運動を継続したい層」と考えます。市場規模としては、こちらの方が圧倒的に大きいはずです。

チョコザップの4P

この層は当然、ライザップのようなパーソナルトレーナーも個室も、厳密な食事管理も求めていません。その代わりに、簡単に申し込め、初心者でも簡単に利用できる気軽なマシン、24時間365日利用できる店舗を提供しています。また、ターゲットとする軽く運動をしたい女性や男性が店舗に向かいたくなる各種サービスも提供しています。例えば、セルフエステ、脱毛、ゴルフ、ネイル、ホワイトニング、マッサージチェアなどです。チョコザップに来店するであろう人たちが、店舗内で時間を過ごすための様々なサービスを展開しています。つまり、ターゲット層に向けて「製品」を新しく設計し直しているわけです。

また、「価格」に関しては、使い放題プランで月額 2,980円となっています。ライザップとの違いは明白です。月額料金としているのも、いつでも始められ、いつでもやめられるように気軽な利用を促すものと考えることができるでしょう。

「チャネル(集客を行う媒体や流入経路)」に関してはどうでしょうか。既に皆さんの周りにチョコザップの店舗ができていませんか?誰もがふらっと気軽に立ち寄れるような場所に立地しているはずです。「プロモーション」もCMなどを見る限りでは、ジムの利用だけでなく、様々な付随サービスを利用させることで来店を促す思惑が見て取れます。

チョコザップは店舗に基本的に店員はおらず、セルフサービス形態となっています。このことは運営コストをさげることで料金を引き下げる狙いがあると思われますが、同時に店員の視線を気にせずに気軽に立ち寄れる雰囲気を作り出すことにも効果を発揮していると思われます。

このようにライザップとチョコザップは同じ企業が運営するトレーニングジムでありながら、その「製品」「価格」「チャネル」「プロモーション」の4Pは全く異なっており、ターゲットによって明確に戦略を使い分けていることが分かるのです。

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中小企業の経営者様にとっては、ライザップのようなマーケティング戦略を立てるのは難しい…と考えられるかもしれません。実際、大手のマーケティング会社に依頼すると多額のコストがかかってしまい、自社の市場とコストパフォーマンスが合わない場合も多く見受けられます。

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