マーケティングの流れとして、内部環境分析、外部環境分析を行い、SWOT分析を実施した後に、いよいよ本格的に戦略立案に入っていきます。ここではSTP分析と言われる方法を使って、自社の対象とするターゲットの設定と戦略の方向性を具体的に定めていきます。なお、全体の戦略立案の流れは「マーケティング戦略の立て方」にてご確認ください。
STP分析とは
STP分析は、マーケティング戦略を立てていく上での最重要なプロセスとも言える、市場細分化(Segmentation)→ターゲティング(Targeting)→ポジショニング(Positioning)を行うプロセスであり、それぞれの英語表記の頭文字を取ってSTP分析と呼んでいます。つまり、自分たちのお客さんを定める、というプロセスであり、私が考える中ではマーケティングのスタート地点を定めるということもできます。
セグメンテーション、ターゲティングは、高度経済成長期のようにマス市場全体を対象として、とにかく大量に安く製品を提供すれば売れていた時代には必要なかった考え方と言えます。市場を全体としてとらえるのではなく、何らかの切り口で細分化し、その中から意図的にどこかの特定の一部分に照準を定め、そこをターゲット市場として自社の強みを発揮できるポジショニング(位置取り)をする作業を行います。個別のプロセスをもう少し詳しく見ていきましょう。
セグメンテーション(市場細分化)とは
セグメンテーションとは市場を細かく分け、ニーズごとにグループ化することです。一部の業界等を除いて、今では日本国民全員をターゲットとするようなマーケティング戦略を立てる企業はほとんど存在しないことは想像して頂けると思います。
例えば、国民食であるコメの生産においても、ブランド化によって届けたいお客さんを想定している時代です。何故なら、モノが溢れている現在では、全員を対象に提供しているような製品は、何の特長の無い商品として、逆に誰にも見向きされずに終わってしまうでしょう。
男性向け、若年層向け、関東のユーザー、インバウンド観光客向け、といった形で、何らかの属性(その人が持っている特性)を持つ人に絞り込んで製品を提供するというのがマーケティングの世界では常識となっています。そして、その前段階でどのように市場を細かくするかという軸を設定するのが、セグメンテーションという考え方です。上記の例では、性別、年齢、地域、国籍などが細分化の基準と言えますが、では、どのような基準で細分化をすることが多いのでしょうか。
B2C市場における市場細分化基準の例としては、まず地理的変数というものがあり、地域、都市または都市部、人口密度、気候等が挙げられます。これは例えば小売業など、物理的な制約がある場合などで特に用いられる変数です。小売店の場合では、商圏というお客さんが来てくれる範囲が決まっていますので、自ずと自社の立地する商圏がターゲットとなります。また、ナショナルブランドの食品メーカーであっても、地域に合わせて味を変える、などという例もあります。比較的わかりやすいセグメンテーションと言えます。
次にデモグラフィック(人口動態的特性)変数です。これは年齢、世帯規模、ライフサイクル、性別、所得、職業等を対象とするセグメンテーションの軸です。若い女性、シニア向け、子供向け、富裕層向けといったターゲットの取り方は、このセグメンテーションの例と言え、これまでは広く使われてきたセグメンテーション方法です。しかし、社会が豊かになればなるほど、こういった単純なセグメンテーションは通用しなくなります。複数の変数の掛け合わせや、次のサイコグラフィックス変数などとの掛け合わせなどが必要になってきます。例えば、キャリア志向の20歳代女性、のようなセグメントです。
さらに、サイコグラフィックス(心理学的特性)変数という分け方もあります。ライフスタイル、性格、価値観と言った例が挙げられます。働く女性向け、単身世帯向け、アクティブなアウトドア派、などと言ったターゲティングのための切り口と言えましょう。最近注目される例としては、環境に配慮した製品に対する意識などが分かりやすいと言えましょう。この時のセグメンテーションとしては、地球温暖化に対して関心が高いor普通or低いということができます。
行動による変数というものもあります。これは使用機会、ベネフィット(受け取る利便性)、ユーザーの状態、使用割合、ブランドロイヤリティ、購買準備段階等が該当します。例えば、自社製品を使ったことのない人に向けてのマーケティング、ハイブランド品のマーケティング、などの例を指摘できます。日本ではスマホはiPhoneユーザーが多いですが、アップル(またはiPhone)に対するブランドロイヤルティが高い国民性と言えるでしょう。ブランドロイヤルティの高いユーザーを獲得すると、その後のマーケティング活動は非常にやりやすくなりますので、各社がこぞって様々なブランドを市場に投入しています。
BtoB市場のセグメンテーション
ここまではBtoB市場におけるセグメンテーションを見てきました。しかし、日本の多くの中小企業はBtoB製品を製造していますので、BtoB市場におけるセグメンテーションの例を見てみましょう。
BtoC市場同様にBtoB企業のセグメンテーションを考えてみると対象が「企業」になしますので、業種、規模、所在地、業歴、代表者の年齢等が挙げられます。業種に関しては、製造業、流通業など、業種や業態などによるものです。規模は売上高、従業員数などが考えられます。所在地は上述の通り、地域によるセグメンテーションとします。
ただ、BtoCにおいては様々なセグメンテーションの切り口がありましたが、企業の属性というのは上記の他にはなかなか見つけにくいものです。何故なら企業の購買は組織的なもので、心理的な要素やライフスタイルのようなものが影響しにくいためでもあります。
そこで私が注目しているものの一つとして、業歴、つまり会社の年齢を挙げることができます。若い会社と古くて歴史のある会社とではかなり企業文化が異なります。これはある意味消費者でいう心理的な要因と似ているように思います。例えば、業歴が50年以上の会社と、創業間もない会社とでは求められるものが大きく異なるでしょう。
また、代表者の年齢も大きく影響するように感じています。例えば、新しいテクノロジーが多いIT関連ツールに関しては、経営者が若くて新しいものへの関心が強いほど採用されやすい傾向にあります。逆に高齢の経営者では、抵抗感が強く、ITツールの導入に後ろ向きです。また、こういったシーンでは経営者の性別なども影響することが多いです。
ターゲティング以降は「マーケティングのSTP分析を行う② ターゲティングとポジショニング」に続きます。
ビーウェル・マネジメントのマーケティング導入支援サービス
上記の通り、セグメンテーションやターゲティングはマーケティング戦略の一番の重要ポイントと言えますが、単純な思い込みではスタートから躓くことになります。
ビーウェル・マネジメントでは、中小企業様専門のマーケティング施策に特化したサービスをご提供しております。的確な戦略の立案から、社内研修・育成まで、コストを抑えて包括的なマーケティング支援であることが最大の特長です。
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