内部環境分析、外部環境分析を行ってSWOT分析を実施したら、いよいよ本格的に戦略立案に入っていきます。ここではSTP分析と言われる方法を使って、自社の対象とするターゲットの設定と戦略の方向性を具体的に定めていきます。
なお、全体の戦略立案の流れは「マーケティング戦略の立て方」にてご確認ください。また、STP分析の前半、セグメンテーションに関しては、「マーケティングのSTP分析を行う①」をご確認ください。
ターゲティングとは
ターゲティングとは、セグメンテーションのプロセスで細かく分類された各市場の中から、自分たちが勝負する市場を選び、決定することを言います。勝負する市場を決定したらそのターゲット層となるユーザーたちのニーズに応える商品やサービスを提供するために戦略を検討します。つまりマーケティングの世界においては、ユーザー層を決めてから何を提供するのかを決めるという順序であり、その逆ではないというところがポイントです。
中小企業の中には、先に製品ありきという事業者さんが特に多い傾向があります。ユーザーの求めるものではなく、ユーザーが求めているに違いないと思いこんだ製品、つまり経営者の「作りたいもの」を優先した結果、「できてしまった製品」が思うように売れず、誰に売りに行けばよいかを当社に相談に来られるということになります。
作り手の都合で生み出される製品のことを「プロダクト・アウト」と言いますが、マーケティングの世界ではそうではなく、消費者ニーズが先行する「マーケット・イン」という発想が重要になります。そのためには、まずターゲット設定が最優先というのがマーケティングの鉄則です。
ターゲティングはいくつかのプロセスを経ることになります。まずは、それぞれセグメンテーションされた各マーケットの「評価」です。各セグメントを評価し、市場の規模や魅力度、成長の可能性、競争状況などといった各視点から、そのセグメントの有望性を分析します。これにより、自社にとって最も魅力的な市場セグメントを探索します。
次に、自社にとって最も魅力的な市場に対するターゲット市場の「選択」です。マーケット評価の結果をもとに、企業は特定のターゲット市場を選択します。この選択は、市場の魅力、企業のリソース、競合他社の状況などを総合的に考慮して行われます。
最後はターゲット市場の「定義」です。選択したターゲット市場を顧客の特性、ニーズ、嗜好、購買力などに基づいて詳細に定義します。そのために、場合によっては特定したターゲット市場向けにマーケティング・リサーチを実施することが効果的と言えます。何よりターゲット層におけるニーズの把握は大変重要ですので、是非リサーチを実施することをお勧めします。
ターゲティングには、デレク・F・エーベルの標的市場の設定という考え方があります。単純にターゲット市場をどこに置くか、だけでなく、製品との関係性でカバレッジの方法を考える方法です。下図はそのパターンを表しています。
単一セグメントへの集中では、経営資源を1つのセグメントに全面的に集中させるものです。ニッチ戦略ともいえ、中小企業はこの方法が現実的です。
製品専門化は、単一の製品を様々な市場のニーズに適合させるべく展開するものです。軽自動車メーカーのスズキなどが該当するでしょう。
選択的専門化は、複数の魅力的な市場に経営資源を投下してより成果が期待される市場の選択方法です。
市場専門化は、特定の市場を対象にその市場における消費者が持つ多様なニーズに対応した様々な製品を提供する形です。高級車を様々に展開するベンツのような存在と言えます。
市場のフルカバレッジは、あらゆる製品を、あらゆる市場セグメントに供給するもので、自動車メーカーではトヨタ自動車のような存在と言えましょう。
ポジショニングとは
STP分析の最後のプロセスはポジショニングです。ターゲットと定めた顧客の頭の中に、自社製品について独自のポジションを築き、ユニークな差別化イメージを植えつけるための活動と言えます。ターゲット市場における差別化の方法であると言い換えることができます。顧客に自社製品のユニークな価値を認めてもらうことで、競合製品に対して優位に立つことが目的と言えます。下図はポジショニングマップの例を示しています。
ポジショニングマップの作り方としては、まず縦軸と横軸になる基準を設けます。図の場合は、横軸はデザイン重視か機能重視かという軸で、縦軸は価格であり高価格か低価格かという価格の軸とします。これにより、機能性-デザイン性と低価格-高価格の4象限ができます。この4象限の中で自社がどの位置取りをすれば、他製品との差別化が可能になるのか、を検討します。
この際に重要なのは、縦と横の軸に何を設けるのかです。企業によって違いが鮮明になるような軸を設定しなければ、意味がありません。また、縦軸と横軸に相関関係があるような軸の設定は意味がありません。
例えば、作業着の専門店であったワークマンが、新たにスポーツアパレルのブランドである「WORKMAN Plus」を立ち上げた際のプレスリリースをご覧ください。
同社は横軸に機能性とデザイン性の軸を設定し、縦軸に高価格と低価格の軸を設定し、アパレルブランドのポジショニングマップを作製し、既存のブランドをマッピング、自社が差別化できるところにマッピングすることで、他社との違いを明らかにしようとしたのです。
ワークマンが低価格で機能性の高いファッションブランドを投入できたのは、作業着で培った調達力やデザインの優れたノウハウがあっためでしょう。このようにポジショングマップによって、自社の明確な方向性を見出すことが目的です。
ビーウェル・マネジメントのマーケティング導入支援サービス
上記の通り、STP分析はマーケティング戦略の一番の重要ポイントと言えますが、単純な思い込みではスタートから躓くことになります。
ビーウェル・マネジメントでは、中小企業様専門のマーケティング施策に特化したサービスをご提供しております。的確な戦略の立案から、社内研修・育成まで、コストを抑えて包括的なマーケティング支援であることが最大の特長です。
もしマーケティングに関してお悩みのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。